今更ながらレンタルでの視聴。
映画館へ足を運ばなかったことを本当に後悔しています。
今回はキャスト割愛で。
でもジョン・グッドマンすげえよかった!
結構おじいちゃんなのに、不良サリーのチャラさが声から溢れてました。
これも大学生役ってことになるよね… |
あとキャストみたらパシフィック・リムで人気のチャーリー・デイの名前が!
しかもアート役でした。
本作で軍を抜いてやばそうなキャラ。 夢日記とかつけちゃう前科者。 |
感想※ネタバレ注意
CG技術はね、もういいんです。
サリーの毛の一本一本の動きとふわふわ感、
マイク達の皮膚のテクスチャ、
上手く表現されてる"夜の人間の世界"のシーン、
もう文句なしにすごい。
でもね、もう我々慣れちゃってるんですよ。
トイ・ストーリーを初めて観た時はそりゃ驚いたけど、
今はもう「3Dで当たり前」「CGは本物と見分けがつかなくて当たり前」
しょぼいと「予算が足らなかったのかな…」とか勘ぐられちゃう時代です。
だからこそ、
それ以外のポイントがすごくないと観る気も起きない、こども達も観ない。
だからこそ4DXなんてのが登場したり、
007シリーズ スカイフォールが「あえて」3D映画にせずクラシックさを売りにしたり、
みんな工夫しているわけです。
ピクサーは、
トイ・ストーリーで「続編は面白く無い」というディズニーのジンクスを見事に打ち破りました。
その面白さは、やっぱり脚本の力だと思います。
「その問題、ちゃんと答え出るの?」っていう問題に果敢に取り組むパワー。
モンスターズ・ユニバーシティも本当にすごかった…
この話は前日談なので、当然オチは視聴者みんなわかっている。
で、その「みんな知ってるオチ」に向かって、どうドキドキハラハラさせるか、これが前日談のキモでしょう。
まんまとやられました。
実はモンスターズ・インク視聴時、私あんまりマイクが好きじゃなかったんです。
「人徳者で才気あふれるサリーのコバンザメのくせに、偉そうぶりやがって」と思ってた。
なんだったら「サリー、マイクのこと甘やかし過ぎじゃない?」とも思ってた。
でも全然違いましたね。
モンスター世界のあこがれの職業「怖がらせ屋」
その夢を叶えるためには、
勉強、トレーニング、そして才能、
才能をもっと具体的に言えば、ルックスです。
そう考えると、「怖がらせ屋」はアイドルとかに近いかもしれません。
徹底的に才能がないけど向こう見ずなマイクは、才能を努力でカバーしようと必死。
一方才能と生まれに恵まれたサリーは、それにアグラをかいて努力する気ゼロ。
まあ、全然気が合いません |
結果、二人ともお互いの足を引っ張り合う形で「怖がらせ学部」を落第してしまい、
落第生チームで学部復帰をかけて「怖がらせ大会」に出場することになります。
最初はまとまりのないチームが、困難を乗り越えてだんだん最高のチームになっていく様は感動的です。
でも、今回はそれで終わらない。
最後の「怖がらせ大会」の試合を前に、
サリーは自分たちを落第させた学長に、
「僕達が勝っても恨みっこなしですよ」と声をかけます。
対して学長は至って冷静に「あなたは彼(マイク)のこと怖いと思うの?」とサリーに問います。
サリーは「マイクは僕達のリーダーだ!」「マイクのコーチングは本当に凄い!」と反論しますが、
結局「マイクは怖い!」とは言えません。だって思ってないから。
その努力を尊敬する仲間から見たって、マイクには「怖がらせ屋」の才能がないのです。
最後の試合は、
チームメンバー全員が、シュミレーターで「怖がらせ」のデモンストレーションをして、その総合点を競うというもの。個人戦です。
「怖がらせ学」においては、こどもの怖いもをちゃんとと理解することが重要とされており、
ライオン、雷、蜘蛛、蛇、サンタクロースという変わり種もありました。(外国では定番なのかも)
当然シュミレーターも、そういうこどもの設定を再現できるように設計されています。
「ああ、こりゃマイクの時は『目玉が怖い』みたいな設定に当たって、運良く上手くいくんだな」と思いました。
それで無事「怖がらせ学部」に復帰して大団円、「みんな自分の個性を活かそうぜ」みたいな。
でもこの読みは大きくハズレます。
ウーズマ・カッパはマイクの叩きだした新記録によって優勝します。
でも優勝の栄光もつかの間、マイクはサリーの行った不正に気づきます。
このへんのやりとり時に流れる不穏な空気が、「え?え?これどうやって終わるの?」と本当に視聴者の不安を煽ります。
トイ・ストーリー3の焼却炉のシーンもそうですが、本当にこういう揺さぶりの演出がうまい。
「お前も僕のことを怖くないと思ってるのか?」「僕はまだ怖い!」
自己証明のために自分勝手な行動に出るマイク。
全体を通して本作のポイントは、サリーはもちろん、マイクが全然良いヤツじゃないことですよね。
良いヤツだったらこんなにドラマティックにならないでしょう。
コンプレックスを努力でカバーしようとするキャラクターを描こうとすると、
かなりの確率で「超いいヤツ」「人間が出来ているヤツ」「完璧なヤツ」になります。
でも現実世界ではそういう人って、
マイクのように、
「自分はこんなに努力してる」ってひけらかしたり、
「なんでこんなことも出来ないんだ?」って周囲の努力してない人を見下したりする、
世に言う「意識高い系」になることが結構多い。
幼少期からこんな調子である… |
ウーズマ・カッパの仲間たちを優勝に導く凄いコーチング能力を身につけても、
マイクはまだ自分を冷静に見れていない、
自分に怖がらせ屋の才能がないことにも、本当の自分の才能にも気づけてないんです。
人間の世界でこども達から「おもしろーい」と言われ、
初めてマイクは、自分に致命的に才能がないことに気が付きます。
危険だと教えられている人間の世界で、その状況も忘れてただ座りこんでしまうほどショックを受けるマイク。
助けに来たサリーも、一族や周囲の期待に苛まれていた事をマイクに打ち明け、
「俺も負け犬だ」と今まで見せなかった彼本来の、繊細で弱い一面を見せます。
ここらへん、前作の「君がいないと(If I Didn't Have You)」の歌詞とか思い出しちゃいますね。
本当の友達同士になった2人は、
マイクは知識とアイデア力で、
サリーは怖がらせの実力で、
互いの力で偉業を成し遂げます。
それでもやっぱり、2人の退学は撤回されない。ご都合主義は通用しません。
今まで「モンスターズ・ユニバーシティに入学して怖がらせ屋になる」ということしか考えてこなかったマイクは、
サリーに「これからどうする?」と聞かれ「初めて計画がないよ」とつぶやきます。妙にリアル。
でも、自分の信じてきたコースから外れてしまったはずのマイクは、憑き物が落ちたような顔をしています。
「サリバン家は関係ない!お前そのものになるんだ」という言葉でサリーの目を覚ましたマイクも、
「努力している自分像」に取り憑かれていたみたいです。
かくして「才能はあるけど繊細なサリー」と「才能はないけど向こう見ずなマイク」のコンビは、
自分たちが想定してきたコースとは外れたコースで、夢に向かって歩き出したのです…。
夢に敗れて、ボロボロになって、退学処分まで食らって、
それでも世界が自分たちに合わせて変わってくれるわけじゃない。
血の滲むような努力をしたって、必ずしも報われるわけじゃない。
それでも、前さえ見てればやり方はある。
かの有名なスヌーピーさんは「配られたカードで勝負するしかないのさ」と言っていましたが、
モンスターズ・ユニバーシティは「挫折を通して自分の本当のカードを見つける」ストーリーでした。
これだけ「努力は必ず報われる幻想」に真っ向から立ち向かい、
キレイにまとめるのはすごいと思います。
結局その後のモンスターズ・インクでのオチまで考えると、
感慨深いものがあります。
「メリダとおそろしの森」「カーズ3」と、少し微妙な作品が続きましたが、
まだまだピクサーの今後が楽しみです。